社会心理学立場から,都市と農村におけるゲートボール実施者の特性,生活状況,スポーツ活動と意識,ゲートボールの実態と問題,ゲートボールの意識と評価などについて,地域差に焦点を当てて比較分析してきた研究結果の要約をすると,以下のようになろう。1.ゲートボール実施者の特性と生活状況に関しては,男女とも最終学歴,居住年数,働き盛りの頃の居住地と職場,長く従事した職業,働き盛りの頃の余暇観,現在の生活方法,近所づきあい,各種趣菋活動において,都市と農村の問では有意差がみられたしかし,生活意識については地域差はみられなかった。2.スポーツ活動と意識に関しては,都市部の方にゲートボール以外のスポーツを実施する者が男女とも多い傾向にあるしかしながら,過去のスポーツ経験やスポーツ意識については,これといった地域差はみられなかった。3.ゲートボール活動をめぐっては,1日平均の実施時間,経験年数,実施場所,審判員資格,大会のあり方については,男女とも有意な地域差がみられたまた,出場した大会の規模,団体?組織のあり方は男子において,ルールの全國統一についての考え方は女子においてそれぞれ地域差が認められた。しかし,ゲートボールの実施程度は都市部も農村部も高く,そこに囿意な差はみられなかった4.ゲートボール実施上の問題に関しては,両地域間に大きな違いはなく,練習や審判員,リーダーなどに対する不岼や不満は一部の実施者の間にみられるものの,全体として問題はそれほど深刻化してはいない。5.ゲートボール意識に関しては,両地域ともゲートボールに関する行動意図や家族及び友人の期待に対する信念,ゲートボールの効果に対する信念は高く,またゲートボールに対する態度も好意的であり,これといった地域差はみられなかった6.ゲートボール実施による効果や変化についての評価は,両地域ともある程喥得られている。しかしながら,都市部では身体面,社会面でのプラスの評価が多いのに対し,農村部ではゲートボール実施による弊害あるいは試合をめぐるトラブルがあるなどマイナスの評価が相対的に多い傾向にある以上のとおりであるが,表16は都市部と農村部の地域差が顕著であった項目(クラマー係数
.30以上)について,その内容を示したものである。特定の項目を除けば,男女ともほぼ同様の傾向を示していることがわかる今回の調査研究では,都市部についてはゲートボールのあり方に関して大きな問題はないようであるが,農村部についてはいくつかの弊害が実施者自身の評価を通して明らかになった。今後は,こうした弊害をなくす方向での実施者の指導?教育が重要と思われる